「もうやらないから、許して」
「○○君もこう言ってるから、許してもらえる?」
俺はこの言葉を何回聞いたかわからない。
小学生二年生から長年、中性的な顔をはじめとした理由でいじめられていた。
「やーい、おとこおんな〜」
「ち○こついてんのかよ〜」
勿論最初は守ってくれる人もいた。だが次第に居なくなり、小学校四年生には一人の時間の方が多くなっていた。
その頃には、先生への信用もなくなっていた。毎回先生に相談していたわけじゃない。勿論最初の頃はことある事に相談していたし、対処もしてくれた。注意をしてくれて、しばらくは何事も……というか何も無かった。でも、暫くするとまた始まった。
次第に先生も面倒になって来たのか、「何でいじめられてるかわからない? 分かったらまた相談して来て」そう言って無理矢理、話を切り上げてまるで僕が悪いかの様に言うようになって行った。
僕はその時、僕はまだ純粋というか行動すれば変わると思っていた。だから、何か気付いた時には先生に話して何とかしてもらおうとした。その時は「何かしてみる」と先生は言ってくれた。僕はそれを二年間、信じ続けたでも何も変わらなかった。何もしていなかった。それはクラス替えに伴っての担任の先生が変わっても一緒だった。
僕は三・四年間耐えた。
自殺を考えたのは一度や二度じゃ無い。
僕はどうしようも無く臆病だった。自殺で現実から逃げようと考え、その自殺も怖くて出来なかった。
そんな考えを巡らせていると、夜眠れなくなって授業中に居眠りをしていた。
それと同時に、自分の中で心の拠り所みたいなものを作った。
見方によれば逃げと思うかも知れない。
少し、ズルいと思うかも知れない
惨めだと思うかも知れない。
だけど、その時の僕にはそれに……そこに逃げるしか無かった。
小学校六年生の時、それを大きく加速させた。
理科の授業、僕はその日異常に眠かった。
担任の先生は諦めているのか、関わるのが嫌なのか俺が授業中寝ていても黙認していた。
でも、他は知らないけど僕の通っていた小学校では五科目以外は担任の先生じゃない先生が担当していた。
その年、理科の授業を担当していた先生は少なくとも、児童と保護者の間では悪い意味で有名だった。キレたらうるさく、上の階にまで怒号が響き渡っていた。
それがPTAの耳に嫌でも入って来るのか、何処の学校にも赴任出来ない、みたいな噂が立っていた。事実、少なくとも僕が高校生の時までその小学校にいた。
話を戻すと、僕は理科の授業中に居眠りをした。その時、その先生は別室に連れていたれて「ここでこの授業中、休んでいていい」そう言って授業に戻って行った。この時、僕は「いい人なのかも知れない」そう思った。
間違いだった。
授業が終わって、僕がいた部屋に先生が戻って来て、少し先生ともう居眠りをしない様注意され僕は教室に戻った。
教室に戻ると、クラスメイト達の僕を見る目が違かった。「やっぱり、授業中に居眠りしちゃったからかな」なんて思っていたら、「おい、睡眠障害者」突然そう言われた。顔を上げると、いじめっ子がいた。
一瞬何を言っているのかわからなかった。
呆然としていると、他のいじめっ子が集まって来て睡眠障害者コールを始めた。
そこで僕の中で溜まっていた何かが決壊した。それと同時に僕の中の何かも壊れた。
僕は歩いた。
ランドセルも持たずに。
ただ、「帰ろう。そして、もうここに来ない様に。出来るだけ人と会わない様に。傷つかない様に」それだけを思って歩いた。
すれ違うクラスメイトには、「睡眠障害者がどうしたんでちゅか〜?」顔見知りには、「あれ? どうしたの」そう言われながら下駄箱まで歩いた。
下駄箱に着いたら、後ろから先生に呼び止められた。クラスメイトに「いきなり教室を出て行った」そう言われて来たらしい。僕に何言われても行動しなかった人がこっちが悪い様に見えている時にはすぐ行動していて思わず笑ってしまった。
先生が来たおかげで、家に帰れなくなった僕は給食の時間、その次の掃除の時間僕は何もせず、校舎の玄関で座り込んでいた。
その日の五時間目、緊急で道徳の授業になった。僕は、教室に入るのが嫌で教室の扉の隣で座り込んだ。監視役だろうか、副担任が僕の隣に立っていた。
暫くして教室から話し声が聞こえなくなって、比較的仲の良いと言うかほぼ唯一と言っていい、僕をいじめないクラスメイトが廊下に出て来た。
そいつは、クラスメイトに汚物の様な扱いを受けていて基本誰にも相手にされ無いのが理由か、人との関わりが苦手な児童が自分が決めて行く、中間学級に通っている唯一まともに僕と会話が出来る今でも仲がいい奴だ。
そいつが、僕の隣に座って僕が理科の授業中に別室にいた時、何があったか教えてくれた。
先生が僕を別室に連れて行って、戻って来たら突然話し始めたらしい。
「〇〇(僕)は、睡眠障害かも知れないから君たちはあまり触れないで上げてくれ」そう言って、授業を再開したと言う。
上の者は下の者の気持ちは、わからないとよく言ったもので、別に教師が上の者って思ってるわけじゃ無いけど、いじめている奴のイジるポイントが向こうからやって来たら……察しの良い人は何が起こるかは、わかると思う。
そう。睡眠障害者コールだ。
先生は善意で僕が睡眠障害である可能性を伝えたのだと思う。それ以外だったら、人間としてどうかしてる。
だけど、教師をやっていれば分かるものなんじゃ無いだろうか。小学生にとって【障害者】と言うものは、いくら道徳の授業を行なっているとはいえいじめの対象になってしまう事を。
それを聞いてまたも、絶望した。
その後の、いじめっ子達の「いじめてごめんなさい。もうしないから許してください」も、直接いじめてないにしろ、いじめの現場を見て注意もせずにのうのうとしていたタチの悪い奴らの「これまで止められなくてごめん。次見たら止めるね」も全て信じられなかった。
下校時間になり、少し先生と話した。またしても僕のせいみたいになった。勿論、居眠りをしたのは僕が悪い。けれど、その日の一件、全て僕のせいされた気がした。
それから夏休みが終わるまで学校に行かなかった。一回だけ、校長先生を含めて学校に両親と話し合いの場があった。学校側は、「こちらは悪く無い。悪いのは誰だ」みたいな話にさせたくてしょうがないと言った話の展開をさせようとしていた。謝罪の言葉は一切無かった。
夏休みが終わって、渋々学校に行った。暫くは、腫れ物の様に扱われた。
それも長くは持たなかった。直ぐにいじめが再開されて、誰も助けも無かった。当然、僕の自分の世界に閉じ籠る時間も増えていった。
僕はそこから吹っ切れた。この前の事件の壊れたものがあったせいなのか、僕と言う人間の価値観が変わり始めた。
最初に変わったのは、いじめっ子というのは最も弱くて怖がりな人間なのだと。誰かを自分より下と言うことを可視化出来ないと自分の存在意義を見失う人種なのだと。それからは、いじめっ子を可哀想だと思う様になった。
次に変わったのは、
「もうやらないから、許して」
「○○(いじめっ子)君もこう言ってるから、許してもらえる?」
この僕が人生で耳にタコが出来る程聞いた言葉に「嫌だ」と言う様にした。
そうすると、ささやかで一番効果的な復讐方法をやり始めた事だ。
いじめっ子もだが、先生でさえもこのやり取りを行えば何もかもが解決する魔法の儀式か何かだと思っているだろうが、当事者にとっては何も解決はしていない。ただ面倒ごとを切り抜けるその場しのぎでしか無いと言うことだ。
ちなみに、「嫌だ」と言った時の先生の鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔は笑えた。
今、いじめられて悩んでいる人は、出来るだけこの様な考えはしないで、辛い時は自分の世界に逃げるという方法をした方が解決し易いと思う。ぶっちゃけ僕のいじめの事件は正確には解決していないから。
最後に自分の世界の逃げ方を書いて終わろうと思う。やり方は簡単。本を読むだけ。大体の小学校、中学校は漫画は持ってきちゃダメだろうから、軽めの小説、ライトノベルなんかが良い。
本を読むと、その本に自分が入ったかのように錯覚する。周りの雑音が聞こえなくなって、ページをめくるたびにワクワクする。逃げかと思われるかも知れないけど、黙れ。
そう思うヤツは自分の行いを振り返って誰かをいじめて無いか振り返って欲しい。
話を戻すと、本を読むと良い事が何個かある。
一つは、語彙力が身に付く。語彙力が身に付くといじめっ子と言い合いになった時に言い合いでは、負けなくなる。その後、殴られたら大人に言おう。流石に目に見える傷があったら動かざる負えなくなる。
一つは、現行つまりは今も新刊が出ている作品を読むと、それが生き甲斐になって人生が豊かになる。
僕は少なくとも、これで中学校二年生まで続いた【睡眠障害者いじめ】を乗り切った。
周りが変わるまで待っていたら、何も変わらない。自分が変わろうとしないで周りが変わるなんて、そんな甘い世界だったら、いじめなんて起こるはずが無いのだから。
それでも、「死にたい」そう思う人は今起きているとこを箇条書きでも良いから書いて見たら少しばかり気が紛れるかも知れない。少なくとも僕はこれを書いている時、気がスッキリした気分になっている。
|